サイブラリアンの調べもの

Cybrarian (Cyberspace+librarian) が,気になることについて,オンラインの情報源を用いて調べます。

サハラ以南のアフリカでのスマホ所有が4年で約2倍。

「海外の図書館へ書籍を寄贈したい。先進国では電子書籍もよく利用されているようだが,新興国は通信環境や端末の普及がいまだ不十分なので,紙の書籍が利用されやすい。だから,とにかく紙の書籍を届けたい」との相談を受けました。

そこで浮かんだ疑問。
新興国では,本当に電子書籍が利用しづらい環境なの?

書籍の寄贈先候補として挙げられていた,アフリカについて調べてみました。
アメリカのシンクタンクが2017年に行った調査によると[1]南アフリカでこそスマートフォンがやや多いものの,他の国ではまだbasic phone(ガラケー)が過半数を占めているようです。

一方で,スマホの所有率は2013年から2017年にかけて上昇傾向にあります。
もっとも伸び率の低いタンザニアで約1.6倍,もっとも伸び率の高いガーナでは約2.6倍に増えています。例示されている6か国の平均値は約2倍(1.967倍)になっています。

 

 

この傾向は2021年時点でも続いているようです。

令和3年版情報通信白書では[2],「新興国においては、平均所得が増加するとともに、スマートフォンやインターネットサービスが低廉化しており、より多様な国民がスマートフォンを介したインターネットサービスを利用できるようになっている。」と述べられています。

 

日本貿易振興機構JETRO)ヨハネスブルグ事務所の川﨑 大佑氏の発表資料[3]でも「安価なスマートフォンの登場も相まって、各国ともスマートフォン普及率は今後とも伸びていく予測。スマートフォンの普及により、今後、アフリカにおけるモバイルを活用したICT・デジタルサービス利活用が更に活発化していくと考えられる。」と述べられています。
※p.6に2018年利用者数と2023年の予測者数予測が示されています。こちらは転載不可なので,リンク先からご覧ください。[3]

現状はまだ不十分かもしれませんが,この調子で進んでいくと,スマートフォン普及にともなって,モバイルブロードバンドが充実し,電子書籍を読める環境も整っていくのではないかと思いました。

余談ですが,令和3年版情報通信白書にて,リープフロッグ型(leapfrogging)発展について,事例の紹介があります。ルワンダでは,血液のドローン配送を行っていたり,南アフリカではayobaというスーパーアプリ(多種多様なアプリ群を統合した一つのアプリ。1つのアプリ上で多様な生活サービスを提供することで、生活を効率化・高度化できる)があるそうです。上から目線で「新興国は,通信環境や端末の普及がいまだ不十分」なんて言っている場合ではない気も。。。

ではでは。


参考文献

[1]Laura Silver and Courtney Johnson. Internet Connectivity Seen as Having Positive Impact on Life in Sub-Saharan Africa. OCTOBER 9, 2018. Pew Research Center REPORT.

https://www.pewresearch.org/global/2018/10/09/internet-connectivity-seen-as-having-positive-impact-on-life-in-sub-saharan-africa/, (accessed 2022-04-05)

[2]総務省. 令和3年版情報通信白書. 2021年7月. p.44., 

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf, (accessed 2022-04-05)

[3]川﨑 大佑. アフリカにおけるICT概況. 2021年3月. 

https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2021/d4d0769e5f781076/shiryo2.pdf, (accessed 2022-04-05)