サイブラリアンの調べもの

Cybrarian (Cyberspace+librarian) が,気になることについて,オンラインの情報源を用いて調べます。

言語のひとつ、手話

第94回アカデミー賞で,国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」。劇中で多言語劇が演じられますが,その中の一つの言語として手話が扱われていたことが,印象的でした。手話を用いている人は、世界中にどれくらいいるのだろう?手話も国ごとに異なるのか?などなど、疑問は尽きず、自分は手話について無知であることに今更ながら気がつきました。

そこで、いろんなキーワードを用いてGoogleを検索したのですが、断片的な情報ばかり。方法を変更して、手話に関する図書から学ぶことにしました。

亀井伸孝『手話の世界を訪ねよう』2009年、岩波ジュニア新書[1]

手話は、万国共通のものではなく、国ごとに異なり、方言まであるとのこと。フランスから招かれた方が米国で手話普及に尽力されたため、アメリカの手話は、イギリスよりもフランスの手話に近いなど。コミュニケーションツールなのだから、手話もまた、使用者間で育まれていくという、考えてみれば当たり前なことなのですが、、この本を通して、学びました。

ショッキングだったのは、「口話法」と「手話法」の話。口話法とは、口の形から発言者が何を言っているかを読み取らせるもの。電話の発明で有名な、アレクサンダー・グラハム・ベル(1847-1922)は、この口話法の推進者で、手話を介さないことで、新しい世界が広がるとの見方から、手話教育に反対していたとのこと。1880年には、ろう者の教育について、聾学校でシュワの使用を禁じ、口話のみ奨励するミラノ宣言が可決されてしまい、その後の聾学校の教育に影を落としたそうです。

手話が明確にその地位を認められたのは、2006年。国連総会にて、2006年12月13日に採択された「障害者権利条約」の第2条定義にて、

「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。

と、手話を言語と定義しています。[2][3]

現在では、ニュージーランドなど、公用語の一つとして手話を認めている国も出てきているようです。[4]長い歴史の中では、つらい時期もあったようですが、いまはれっきとした言語の一つとして手話は認められているのですね。なので、「ドライブ・マイ・カー」で手話を一言語として扱っていることに驚いた私自身が無知だったのでした。。

<余談>

このブログを始めた当初、今の時代、インターネットで大抵のものは調べられると思っていましたが、傲慢でした。。参考文献[1]に挙げた本を読んだ後、そこで取り扱われる事項等はGoogleで検索できましたが、その手前、全体像を知るには本が重要と痛感しました。

ではでは。


参考文献

[1]亀井伸孝『手話の世界を訪ねよう』2009年、岩波ジュニア新書

[2]Convention on the right of persons with disabilities. Article2-Definitions.

https://www.un.org/development/desa/disabilities/convention-on-the-rights-of-persons-with-disabilities/article-2-definitions.html, (Last accessed 2022-07-18)

[3]外務省. 障害者権利条約.https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000069541.pdf, (Last accessed 2022-07-18)

[4]World Federation of the Deaf. The legal recognition of national sign languages. https://wfdeaf.org/news/the-legal-recognition-of-national-sign-languages/ (Last accessed 2022-07-18)

トコジラミ(ナンキンムシ)が2022年のいまもニューヨークで流行

オンライン英会話で,ニューヨーク在住のS先生から,トコジラミ(ナンキンムシ;英語ではBed Bug)が,流行っているという話を聞きました。新型コロナウイルスの影響で,衛生面への注意が高まり,トコジラミは減少傾向にあるものの,いまだにかなりいて,油断できないそう。


The Bedbug Registry というウェブサイトを,S先生から教えてもらいました。City mapをクリックすると,各都市の状況が見られますが,サンフランシスコやロサンゼルスなどの他の大都市と比べて,ニューヨークが圧倒的にトコジラミ率が高いですね,真っ赤!!(2022年4月10日現在)。S先生いわく「ニューヨークにはいろんなところから人が来て,生活習慣もさまざまだから,寝る前にシャワーを浴びずにベッドに入る人もいて,そこでトコジラミが増えてしまうんだ」とのこと。

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出典: The Bedbug RegistryのCity map

日本では昔に流行ったけれど,とっくにいなくなっているものと思っていたので,S先生には「大変だねー」と余裕で返してしまいました。ところが,その後で調べてみたところ,日本でもトコジラミの相談が2010年頃から急増しているようなのです[1]

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出典: 平尾素一. 衛生動物に関する最近の動向. 2016-02-05発表資料

主な原因は,訪日外国人や帰国者による日本国内への持ち込みのようです。いまは日本も衛生面にはより注意が払われていますし,そもそも新型コロナウイルスのために,海外からの来日者数もとても限られていますが,アフターコロナの時にさらなる注意が必要になるかもしれませんね。

ではでは。


参考文献

[1]平尾素一. 衛生動物に関する最近の動向. 2016-02-05発表資料. 

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000113189.pdf, (2022-04-10 accessed)

サハラ以南のアフリカでのスマホ所有が4年で約2倍。

「海外の図書館へ書籍を寄贈したい。先進国では電子書籍もよく利用されているようだが,新興国は通信環境や端末の普及がいまだ不十分なので,紙の書籍が利用されやすい。だから,とにかく紙の書籍を届けたい」との相談を受けました。

そこで浮かんだ疑問。
新興国では,本当に電子書籍が利用しづらい環境なの?

書籍の寄贈先候補として挙げられていた,アフリカについて調べてみました。
アメリカのシンクタンクが2017年に行った調査によると[1]南アフリカでこそスマートフォンがやや多いものの,他の国ではまだbasic phone(ガラケー)が過半数を占めているようです。

一方で,スマホの所有率は2013年から2017年にかけて上昇傾向にあります。
もっとも伸び率の低いタンザニアで約1.6倍,もっとも伸び率の高いガーナでは約2.6倍に増えています。例示されている6か国の平均値は約2倍(1.967倍)になっています。

 

 

この傾向は2021年時点でも続いているようです。

令和3年版情報通信白書では[2],「新興国においては、平均所得が増加するとともに、スマートフォンやインターネットサービスが低廉化しており、より多様な国民がスマートフォンを介したインターネットサービスを利用できるようになっている。」と述べられています。

 

日本貿易振興機構JETRO)ヨハネスブルグ事務所の川﨑 大佑氏の発表資料[3]でも「安価なスマートフォンの登場も相まって、各国ともスマートフォン普及率は今後とも伸びていく予測。スマートフォンの普及により、今後、アフリカにおけるモバイルを活用したICT・デジタルサービス利活用が更に活発化していくと考えられる。」と述べられています。
※p.6に2018年利用者数と2023年の予測者数予測が示されています。こちらは転載不可なので,リンク先からご覧ください。[3]

現状はまだ不十分かもしれませんが,この調子で進んでいくと,スマートフォン普及にともなって,モバイルブロードバンドが充実し,電子書籍を読める環境も整っていくのではないかと思いました。

余談ですが,令和3年版情報通信白書にて,リープフロッグ型(leapfrogging)発展について,事例の紹介があります。ルワンダでは,血液のドローン配送を行っていたり,南アフリカではayobaというスーパーアプリ(多種多様なアプリ群を統合した一つのアプリ。1つのアプリ上で多様な生活サービスを提供することで、生活を効率化・高度化できる)があるそうです。上から目線で「新興国は,通信環境や端末の普及がいまだ不十分」なんて言っている場合ではない気も。。。

ではでは。


参考文献

[1]Laura Silver and Courtney Johnson. Internet Connectivity Seen as Having Positive Impact on Life in Sub-Saharan Africa. OCTOBER 9, 2018. Pew Research Center REPORT.

https://www.pewresearch.org/global/2018/10/09/internet-connectivity-seen-as-having-positive-impact-on-life-in-sub-saharan-africa/, (accessed 2022-04-05)

[2]総務省. 令和3年版情報通信白書. 2021年7月. p.44., 

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf, (accessed 2022-04-05)

[3]川﨑 大佑. アフリカにおけるICT概況. 2021年3月. 

https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2021/d4d0769e5f781076/shiryo2.pdf, (accessed 2022-04-05)